最近、オンライン広告やセミナー等で共創型M&Aという言葉を目にすることがあります。共創型M&Aは“買収して終わり”ではなく、買い手・売り手が協働し新価値を創出する最前線の手法。概念の違い、国内成功事例、6ステップ実現プロセス、失敗回避のポイントを解説します。

目次

共創型M&Aとは?──概念と従来M&Aとの違い

「共創(co-creation)」とは、企業が顧客・取引先・行政など多様なステークホルダーと協働して新しい価値を創り出す行為を指します。社会課題が複雑化し、単独企業では解決できない局面が増えるなか、M&Aにおいても互いの強みを掛け算して“非連続成長”を狙う取引が脚光を浴びています。従来のコスト削減型・支配型M&Aと区別するため、「共創型M&A」と呼ばれることになりました。 また、最近この言葉が注目される理由の一つは、様々な社会課題が浮き彫りになっている現在、ひとつの企業だけで課題を乗り越えることが難しくなっており、そんな中、産官学のあらゆる分野で「共創」することで、新しいイノベーションを生み出そうという事例が増えて生きているからです。 例えば、政府は、デジタル改革共創プラットフォームという地方公共団体と政府機関の職員がオープンなコミュニケーションをとれるプラットフォームを設立し、情報連携を活発化と自治体のDXの促進を目指しています。

参照 デジタル庁「デジタル改革共創プラットフォーム

他にも、ビール大手のサッポロビールは、一般ユーザーから募ったアイデアをもとに新たなクラフトビールを開発する「HOPPIN’ GARAGE」というサービスを打ち出しました。CtoCコミュニティを運営するスタートアップ企業とも提携し、ビール好きのコミュニティを通じてブラッシュアップした商品を世に送り出しています。

参照  サッポロビール株式会社 2018年10月ニュースリリース「本格的なユーザーイノベーションによる価値創造を目指した 次世代サービス「HOPPIN’GARAGE」が始動

以上のような共創に関する取り組みを踏まえると、共創型M&Aは、買い手企業、売り手企業がお互いの強みを活かし、協働して新しい価値を創出し、共に成長することを目的としたM&Aと言えるでしょう。
従来型M&A 共創型M&A
目的 支配権取得・規模拡大 新価値の共創・協働成長
PMIの姿勢 “親会社→子会社”の上下関係 対等パートナーシップ
KPI コストシナジー、EBITDA 新規顧客獲得、ブランド価値、共創売上
 

共創型M&Aがもたらす3つのメリット

ブランド価値の飛躍的向上

消費財やD2C領域の例では、売り手のユニークな世界観と買い手の広告運用・販路を結合することでブランド認知が非連続に伸長します。

デジタル × リアルのシナジー最大化

買い手が保有するデジタルマーケティング基盤と、売り手のリアル店舗・製造ノウハウを掛け合わせることで、オムニチャネル戦略を短期間で構築できます。

社員エンゲージメント・採用力アップ

「協働で価値を創る」というミッションは従業員のモチベーションを高め、優秀人材の採用競争力や離職率の改善にも寄与します。

国内スタートアップ × 大企業 ― 共創型M&A 成功事例 4選

以下、国内スタートアップと大企業の共創型M&Aの事例です。お互いの強みを活かす連携をすることで、双方の事業成長に寄与していります。
# 取引(発表年) 共創テーマ・シナジー
1 三菱地所 × 株式会社東京〈TOKYO〉 (2024) ※エレベーターメディア「GRAND」を運営するスタートアップ 三菱地所の都心オフィスビル群 × TOKYOのデジタル広告 ビル内エレベーター約4,000基へ端末拡張を加速 50億円超の追加投資で専用ハードを共同開発
2 KDDI × SORACOM (2017) 4G・5G/LTE網 × IoT通信プラットフォームを企図 KDDIはセルラー LPWA計画を、SORACOMはグローバル回線とクラウド接続を相互活用し、グローバルにも通じるIoTプラットフォームの構築
3 Hitachi × Kyoto Robotics (2021) Kyoto Roboticsの高度な知能ロボットシステムの技術・ノウハウを獲得し、ロボットステムインテグレーションをワンストップかつスピーディーに提供可能。
4 江崎グリコ × GREEN SPOON (2024) 江崎グリコのアーモンドミルクとGREEN SPOONのスープを使った共同キャンペーン 双方のブランド力、顧客基盤、販売チャネルをいかしたマーケティング戦略
この他にも、共創型M&Aを標榜するMOON-X株式会社の例を紹介します。同社は、2019年にP&G、楽天、Facebookで要職を歴任した長谷川 晋氏が設立し、ブランドの共創型M&Aを主力事業としています。

具体的には、「日本のモノづくりの良さ」に着目し、国内の素敵なブランドや製品を持つ企業を買収し、同社の持つブランディング・マーケティングノウハウやテクノロジーの力により、共に飛躍的なビジネス成長を創出しています。

以下の企業が、共創型M&Aによりグループインし、ブランディングやEC事業の協働により、事業を成長させています。

株式会社猫壱 ペットグッズ(猫)販売

株式会社太陽 枕等の寝具販売

ケラッタ株式会社 ベビーマタニティグッズ販売

レバンテ株式会社 健康食品の企画製造・販売

株式会社AINEXT バッグ・小物販売

参照 MOON-X株式会社 M&Aに関する説明ページ

共創型M&Aを成功させる6ステップ

STEP1 戦略目的と共創イメージの明確化

“ブランド再成長” “DX補完”などテーマを具体化

KPI(共創売上、新規顧客数など)を事前定義

STEP2 候補企業ソーシングと価値創出仮説

自社資産 × 相手資産をマトリクス化し、シナジーマップを作成

価値創出仮説に合致しない案件はスクリーニング

STEP3 価値評価=フェアバリュー+共創ポテンシャル

伝統的DCFに「“α”として共創シナジー価値」を上乗せ

逆に文化摩擦コストを割引要因として考慮

STEP4 デューデリジェンスとカルチャーフィット確認

ビジネス・財務DDに組織文化DDを追加

創業者・主要人材のリテンションプラン設計

STEP5 PMI 100日プランの例

項目 0-30日 31-60日 61-100日
ブランド統合 タグライン共有 共同キャンペーン 第1弾新商品発売
デジタル基盤 EC連携 CRM統合 共通ID施策開始
KPIレビュー 共創KPI正式採用

STEP6 KPIトラッキングとガバナンス

四半期ごとに「Revenue / Cost / Capital」3指標でシナジー実現率をレビュー

失敗を防ぐためのリスクマネジメント

ガバナンス設計

ブランド毀損や情報漏洩を防ぐため、権限規定・ガイドラインを早期整備

人材流出リスク

リテンションボーナス+株式インセンティブを組み合わせ、キーマン離脱を防止

よくある質問(FAQ)

Q1 共創型M&Aに向いている業種は?

消費財D2C、食品・飲料、IPビジネス、SaaS、デジタルマーケティング、AI、DXなど「ブランドやユーザーデータ、高度な技術力を軸に非連続成長が狙える業種」が適しています。

Q2 資金調達手段は?

株式交換・第三者割当増資・アーンアウトを組み合わせるパターンが多く、「買収+成長後の利益シェア」構造により、両社に企業価値価値向上のインセンティブをもたらします。

Q3 PMIにかかる期間は?

初期100日でQuick Winを出し、12〜24か月で本格統合。

 

まとめ:共創で非連続成長を実現するM&A戦略

共創型M&Aは、単なる買収ではなく “掛け算”で新市場を切り拓く戦略的投資 です。

本稿で紹介した6ステップを踏み、シナジー起点のKPI設計・ガバナンス強化を徹底すれば、買い手・売り手の双方が持続的に成長できる“WIN・WIN”のトランザクションが実現します。まずは自社の資産棚卸しと共創テーマの設定から着手し、非連続成長の第一歩を踏み出しましょう。

弊社では、共創型M&Aの成功の秘訣について、リアルな情報をお伺いするため、2024年8月1日に「【無料特別ウェビナー】共創ストーリー型M&A 成功の秘訣を大公開! ~大手企業とのシナジーを実現したキーマンの本音トーク~」と題し、ウェビナーを開催いたしました。

ウェビナー企画ページ https://peatix.com/event/4026717/

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執筆者 株式会社M&A共創パートナーズ M&Aアドバイザー 篠浦 隆宏  株式会社みずほ銀行に入行し、富裕層向けの資産運用の提案に従事。株式会社日本M&Aセンターへ転職後、M&Aコンサルタントとして幅広い業種のM&Aをサポート。前職は、新興のM&Aブティックにて主にIT企業のM&A案件を担当し、数多くの譲渡企業の支援に従事。
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